巡回指導/監査対策

巡回指導/監査とは

「巡回指導」や「監査」という言葉に良い印象を持たない運送会社様は多いと思います。 
運送業は法令を遵守し運営することが難しい業種であると一般的に言われています。
 法令違反はないか・適切な経営がなされているか・細かくチェックされ不備があればペナルティを受けるのが「巡回指導」や「監査」です。
法令に基づく届出がされてないことや、乗務員の法令違反を黙認していると処分を受ける対象となり、最悪の場合は事業停止や運送業許可を剥奪されてしまいます。 
普段から完璧な運営をされていれば急な監査も恐れるに足らないかもしれませんが、よほどの大企業で法令遵守を強く意識している事業者でない限り指摘事項がゼロなんてことはまずないでしょう。

当事務所では突然の巡回通知にも対応致します。

「巡回指導」「監査」「行政処分」についてこのページが参考になれば幸いです。

巡回指導

1:巡回指導とは

巡回指導とはトラック協会〔貨物自動車運送適正化事業実施機関〕により、運輸開始〔営業所新設〕後およそ3ヶ月から6ヶ月以内に行われます。それ以降は、およそ2年に1回のペースで実施されるのが基本となり、2人1組の巡回指導員が担当し1時間~2時間で終了します。
〔適正化事業実施機関の人員にも限りがある為、特に運送会社が多い東京、大阪、埼玉などの大都市では何年も巡回指導が来ないという事業者様もおられますが方針としては上記の期間となります〕


巡回指導の通知は、実施日の2週間~1ヶ月程度前に許可(認可)を取得した営業所に届きます。
基本的にはその書面に書かれている帳票類を閲覧に来るので、作成できていなければ作成し、所定の健診や診断を定められた時期に受けていれば対応できるでしょう。

2:巡回指導項目と評価基準

巡回指導は37項目に運輸安全マネジメントを加えた、計38の指導項目があります。

➡チェック項目〔東京都参照〕

判 定 基 準
〔総合評価はA~E5段階〕
判定割合
A35以上3以下90%~
B31以上7以下80%~90%未満
C27以上11以下70%~80%未満
D23以上15以下60%~70%未満
E22以下16以上60%未満
〔注〕重点項目として定められている項目が1つでも【否】の場合はそれだけで判定が1段階引き下げられます
重 点 項 目
運行管理等運行管理者の選任・届出
乗務割、運転日報の作成・保存
点呼記録簿の作成・保存
法定項目の実施・保存
社内特別教育の実施・保存
社外適性診断の受診・保存
車両管理等整備管理者の選任・届出
定期点検基準の作成、整備記録簿等の保存
労基法等健康診断の受診・保存
※期限の定めがあるもの〔健診や点検〕は、所定の期間に受けていなければ基本的には弾かれるという認識で書類を揃えていくのが良いでしょう
3:巡回指導後

巡回指導でDもしくはE判定を受けた場合は通常2年に1回のペースである巡回指導がA・B・Cの判定を受けるまで半年に1回ペースとなります。(令和5年4月以降の指針)
判定に関わらず改善を要する事項については、項目による指示に従い1週間~3ヶ月の間に改善報告書を提出し、その後もその水準で運営していくことが必要です。
指摘された事項の改善が見られない場合などは、2年を待たず監査にも似た抜き打ちで巡回指導が行われるケースもあります。

➡適正化実施機関の巡回指導

監査

1:監査の種類と流れ

監査とは上記の巡回指導などによる改善命令に従わない・改善の見込みがない、若しくは法令違反、重大な事故を起こしたという場合に運輸支局〔監査部門〕により実施されます。
通常は無通告で営業所等に監査員が出向く臨店監査が行われ、指摘事項改善後に事業者が報告・提出に出向く呼出監査が行われます。

監査の種類
特別監査引き起こした事故が重大な場合や重大な法令違反の疑いのある場合など社会的影響が大きいとき
一般監査特別監査には該当しないが法令遵守状況を確認する必要があるとき
街頭監査運行実態を確認するため街頭において事業者を特定せずに実施する〔バス事業者〕

言葉からもわかるように特別監査はこの中で1番厳しく、一般監査は特別監査の要件に該当しない場合に実施されます。そして街頭監査とは事業者を特定せず不定期で行われます。

監査の流れ
1臨店監査の実施基本3名体制で丸1日掛けて行われます。
2監査実施後、違反事項の内容説明を受け確認書が手渡される監査は基本無通告で行われるため、作成済だが手元に無い帳票類があればその旨しっかり伝えましょう。
事実と異なる指摘事項はしっかり説明しましょう。
31~3ヶ月以内に違反事項と処分内容が記された弁明通知書が届くこの時点では監査員も隅から隅まで調べ上げた後なので違反事項を覆すことは難しいと言えるでしょう。
4およそ1か月後に行政処分の内容が決定し、輸送施設の停止および付帯命令書が届く同時期に電話による連絡がきて、確認および日車処分の場合のプレート返納日が指定されます。
5領置指定された日に車検証およびナンバープレートを返納します。
6改善報告書が届く
7呼出監査の実施改善報告書と違反事項全てを是正した事がわかる帳票類を持参する。
違反事項があれば監査実施から呼出監査まで約半年の期間が掛かります
2:監査基準

監査が入るきっかけ
運転者が第1当事者と推定される死亡事故を引き起こした場合
運転者が〔酒酔い・酒気帯び・過労・薬物等使用・無免許・無保険・無車検〕運転をした場合
運転者がひき逃げやあおり運転等悪質な違反を引き起こした場合
法令違反〔社会保険等未加入・最低賃金法違反・道路不正利用〕の通報、疑いがあった場合
※通報者とは労基等の行政機関だけではなく従業員等一般市民も含まれます
巡回指導を拒否した場合
巡回指導、監査、行政処分後に改善報告を提出しなかった場合
事故報告書を提出しなかった場合
その他、状況を勘案し監査が必要と認められる場合
その他
こちらは一例ですが、理由は何にせよ運輸支局が必要と判断すればいつでも監査の対象になるということです。
3:監査の方針

1番厳しい特別監査では全てを徹底的に確認します。
そして一般監査は通報等で疑わしいところに重点を置き確認が行われます。

「巡回指導」はあくまでも指導であり、運営・管理方法を教えてもらえる機会でもありますが、監査は法令違反など何らかの疑いのある事業者に対し行われるものであり、指摘がゼロということはまずありません。

監査をむかえるに当たり巡回指導に定められている項目は完璧にクリアしておきたいところです。
加えて、会社間の運賃収受や従業員の賃金などお金の流れも確認事項とになります。

監査重点項目要注意
事業計画の遵守状況営業所や車庫は許可〔認可〕時と変わらず適切な規模・場所であるか
運賃・料金の収受状況提出している運賃料金設定届との整合性はあるか
損害賠償責任保険加入状況
自家用自動車の利用、名義貸し行為の有無車両点検簿、日報等の自社走行距離がわかるものに差異はないか
社会保険等の加入状況
賃金の支払い状況
運行管理の実施状況点呼実施者が点呼を行うことができる時間・勤務状況であるか
点呼記録簿と運転日報に整合性はあるか
長距離運行の際の運行指示書が作成・保管されているか
日報の記載事項に不備がなく、走行距離との整合性はあるか
タコや日報に差異がないか
デジタコを切っている、丸タコを抜いている時間がないか
整備管理の実施状況整備管理者が運行の可否を下せる時間・勤務状況であるか
3ヶ月点検が基準に沿い遵守されているか
要注意に該当するのであれば確信犯である場合もあり悪質であると言えます。
労基署や自社社員の通報による監査の場合は、その内容が最重要となります
監査員はプロであり、もし偽造をしていると隠し通すことは困難でありやるべきではありません。早急な改善が求められます。

➡監査方針(国土交通省)

行政処分

監査の実施により違反があれば該当の営業所に対し行政処分が下されます。
行政処分には種類があり違反の程度により3段階に分かれます。
0:勧告、警告
1:車両使用停止
2:事業停止〔該当の営業所または管轄内全ての営業所〕
3:許可取消

1:車両使用停止〔日車〕

車両停止とは6ヶ月以内の期間を定めて車検証とナンバープレートを返納し、一定期間車両を使用できない状態にすることです。

日車の考え方と違反点数制度

【日車】
警告を超える法令違反の程度、件数により日車が加算されていき車両停止日数が決まる事になります。
日車とは違反点数と同じく事業停止や許可取消の基準ともなるものですが、合計の日数を実際に何台で分配するのかは、下記の表を参考にしてください。

【違反点数制度】
行政処分では1つの違反(程度による)に対し日車+違反点数が課されます。
10日車で違反点数1となります。
そして~日車や違反点数の累計により、車両停止だけでなく事業停止や許可取消へつながります。
違反点数の累計期間は3年間〔Gマーク認定事業者もしくは処分日以前2年間点数の付与がない場合は2年間〕です。

➡違反事項ごとの行政処分基準(国土交通省)

【処分日車基準】
処分日車数所属車両台数
1台~10台11台~30台31台~60台61台~100台
~10日車1台1台1台1台
11日車~30日車1台2台2台2台
31日車~60日車1台2台3台3台
61日車~80日車2台3台4台5台
81日車~処分日車数+(所属車両台数ー80)÷10
➡詳細は行政処分基準(国土交通省)
法改正に伴い使用停止車両の割合が保有車両の最大5割に引き上げられました

改正前は仮に保有台数10台の事業所が200日車の処分を受ければ2台を各100日使用不可となっていましたが、改正後は5台を各40日使用不可となり、1度に停止される台数が増えたことになります。

処分の対象となる車両は、違反に使用されていた車両となります。
処分の時にその車両がなければ同年式や同仕様の車両が優先的に対象となります。
事業者側から予備車や使用頻度の少ない車両を指定しても基本的に聞き入れられないと思っておきましょう。

2:事業停止

事業停止とは基本的には30日間、運送事業に関するの全ての業務(利用運送含む)を停止することです。なお、違反の累積により複数の営業所が事業停止となる場合があります。

【事業停止処分】
【要注意】
下記は悪質または重大な法令違反として、それだけで事業停止となり得ます
名義貸し
全運転者に対し全点呼の未実施
労働時間、運転時間の著しい基準違反
運行管理者が全くの不在
整備管理者が全くの不在
全車両3ヶ月点検未実施
国土交通省による検査の拒否、虚偽の陳述
その他
【事業停止の範囲】
同一管轄での違反点数が累計30点以下の事業所が270日車以上の処分日車数を受けた場合対象事業所の事業停止
同一管轄での違反点数が累計31点以上の事業所が180日車以上の処分日車数を受けた場合対象事業所の事業停止
同一管轄での違反点数が累計51点~80点以下の場合対象管轄内の全ての営業所の事業停止
3:許可取消
【許可取消基準】
累計違反点数が81点以上となった場合
事業停止処分を受けた事業者に3年以内に同一の違反があった場合
特定の命令に従わず行政処分を受けた事業者が、3年以内に同一の命令・行動を起こしたことが認められた場合
事業者の所在が不明で一定期間事業の実態が確認できない場合
その他
行政処分中にできないこと

行政処分中は営業所、車庫の新設や車両増車など事業拡大に伴う手続きは不可。
そしてこの措置は程度により、行政処分の後3ヶ月~12ヶ月まで延長されます。

行政処分以前に申請した認可や変更届には基本的に影響を与えません〕

当事務所がお手伝いできること

巡回指導は非常に細かい部分についても指導を受けます。
A~Eまでのランク判定が行われ、D・Eランクの判定となってしまった場合には、監査の対象となる可能性があります。


監査は巡回指導のように甘くはありません。
聞こえは悪いですが、法令違反を断定し行政処分を与えるために実施されます。
通報等により法令違反の疑いがある事業者に対し行われる事からも容易に推測できます。
そして、運送事業者に対する行政処分は年を追うごとに厳しいものへと法改正を繰り返しています。

行政書士法人フロンティア

こちらのページをご覧の事業者様の中には今まさに巡回や監査の通知が届いている方もいるかも知れません。
そのような場合は期日までに優先順位を立てて早急に対策していく必要があります。
仮に処分を受けても軽微なもので済むように運送業の専門家である当事務所が徹底してお手伝い致します。突然の巡回、監査にも対応致します。ぜひ1度ご連絡ください。

※2017年以前に運送業を開始している事業者様は
標準約款変更による運賃変更届を提出しているか今1度ご確認ください。

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